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つぶや記 189
地方が栄えてこそ

   吉田松陰は「太平久しかるべし、悲しいかな」と言いました。これを聴いた人から「平和がつづけば結構ではないか、何を悲しむことがあろうか」との反論がありました。
   松陰は「わたしは乱を好むものではないが・・・・・・」と断わって、太平が長くつづくための弊害を挙げた中で、多くの有能な若者が江戸に出て行き、地方の知力が低下することを嘆いています。これが松下村塾の誕生につながるのです。
   文化だけでなく、政治・経済もふくめた中央集中は現代に至るまでもつづく社会現象です。いくらか是正されたとはいえ、すべてが中央に集中する旧態は残存しています。
   江戸時代、幕府が作った国家のかたちは、特にひどいものでした。鎖国政策にいろいろ理屈はついていますが、要するに地方の大名が勝手に海外貿易をやって富裕化し、幕府の権力に脅威を与えることを警戒、幕府が貿易を独占するのが目的です。しかし長崎に小さな窓をあけオランダとのささやかな取引をしたに過ぎませんでした。
   米の経済にすがるだけの農業国家が、国力を増進する施策は江戸幕府に皆無でした。また幕府の参勤交代は、地方大名の財政を極度に苦しめ、破綻に追い込みましたが、それも幕府の狙うところだったのです。大名たちが貧乏でピイピイして地方が疲弊しておれば、幕府の権力は安泰だったのです。
   江戸幕府は無能であるだけでなく、成立のときから亡国の政権だったのです。一国の繁栄は、足腰がしっかりした地方の土台の上に築かれるのです。おのれの権力保持に腐心して地方を無視した幕府は滅びました。
   現代にいたっても明治以来の日本政府が、江戸幕府に似たことをやってこなかったとは言いきれません。東京一極集中がそのひとつの証拠です。
   さて改造内閣で地方創生を担当する大臣が生まれました。これまでの内閣にみられなかったことで、成果に期待したいと思います。
                                                                              (古川 薫)

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