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つぶや記 187
治山治水ということ

   まず広辞苑を引きましょう。「治山治水」の項には「山と河川の整備・管理。国土を治める根本理念」とあります。
   むかし「暴れ天竜」と言われた天竜川(静岡県)の治水に人生を捧げた金原明善は、治水の源流たる山も治めなければならぬことを発見しています。つまり治山治水です。
   金原は明治8年(1875)天竜川治水のために自力で治河協会を起こしましたが、利潤と無関係の組織には民間の協力が得られず、行政からも無視されました。
   金原が政府に直訴したとき、対応したのが内務卿の大久保利通で、政府の援助を取り付けたのですが、直後に大久保は暗殺されています。やがて政府は手を引いてしまいます。
   国土を治める根本理念たる治山治水にたいする為政者の認識とはその程度のものでしたが、そのうちに水害が頻発するようになって世論が高まるにつれて認識はあらたまり、日本治山治水協会、全国治山治水協会といった組織も生まれて、戦後の一時期は会長に大物政治家を据え活発な活動を展開しました。
   ところが全国の農林関係を網羅するこの組織が選挙の集票装置化するかの傾向が出ると批判も出はじめ、本来の治山治水そのものの声が政治から遠のき、組織は健在のはずですが、存在感は希薄というのが実情ではないでしょうか。
   このたびの広島の水害は、まさしく政治の根本理念たる治山治水政策の不備を痛感させます。治山治水協会の名さえ聞きません。それどころかかなりの身分の人がテレビで「自己責任ということもある」と発言するに至っては、現代政治の荒廃を象徴する悲しいひとことと言うしかありません。
                                                                               (古川 薫)

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