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つぶや記 178
食糧危機に備える捕鯨

  貿易をめぐるオーストラリアとの国交が、にわかに蜜月の様相を帯びてきたというニュースに、わたくしたち下関市民は複雑な反応を見せざるを得ないのです。
  ハーグの国際司法裁判所が、日本の調査捕鯨は条約に違反すると認定、今後実施しないよう命じる判決を出して間もなくのことだからです。なぜってオーストラリアは捕鯨反対の発頭国のひとつであり、声高に日本捕鯨を非難している国家です。それはそれ、これはこれというのでしょうか。
  10数年前、作家・ナチュラリスト、C・W・ニコル氏の講演を小倉で聴きましたが、そのときも捕鯨問題が出ました。ニコル氏は日本の捕鯨に理解をしめしている人ですが、「日本人はおとなしいですね、ヨーロッパのテレビでの捕鯨の討論会でも日本人は表舞台に立つと弱気というのか、萎縮して堂々と持論をかかげる覇気が感じられない」と、そんなことを言っていました。このたびのハーグ裁判の実況が伝わってきてからの日本側の反応は落胆と諦めでしかありませんでした。もっと怒るべきです。今後の捕鯨論陣は大丈夫かと考えてしまいます。
  油を採るのが目的で、それが終わった鯨は海に投げ捨てるという無残な鯨捕りを長年やっていた野蛮人たちには、感謝と愛情をこめた宗教的な営みとしての日本人の漁労の伝統は到底理解できないでしょうから、そこがむつかしいところです。
  もともとは異常な発展をとげた日本経済に対する嫌がらせに、動物愛護の旗を偽装する低次元の発想から出たのが反捕鯨なのです。C・W・ニコル氏はこんなことも言っていました。「鯨の次の標的は、世界で日本人がいちばん好きなマグロですよ」
  事実、マグロの漁業規制はすでにはじまっています。これも際限のない日本タタキ以外のなにものでもありません。マグロ資源枯渇の論拠は薄弱で、詳細な調査に基づいたものではないのです。南氷洋の鯨は実際には増えつづけているというのが調査捕鯨の結論ですが、放置すると生態系に異常をきたして絶滅ということにもなりかねない。調査捕鯨はその任務も背負っているのです。
  世界食糧危機は、近い将来の不安です。第二次大戦後の食料飢饉に鯨肉がどれほどの役割を果たしたかを忘れられません。南氷洋捕鯨は近未来への備えでもあるのです。危機が極限状況に達すれば、古代さながらの捕鯨漁場獲得をめぐる軍事衝突もおきかねないでしょう。もしかしたらそれを見越して、南氷洋の既得権益を日本ににぎらせまいとする陰謀が捕鯨反対の裏に隠されているといえばSF映画の見すぎかもしれませんが、とにかくこのたびの判決で引き下がるのではなく、捕鯨先進国日本の主張をあくまでも貫かねばなりません。
                                                                              (古川 薫)

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