トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記174 ヒコットランドの美女と野獣

つぶや記 174
  ヒコットランドの美女と野獣

   先日催された「木暮実千代と下関展」の最終日、頼まれて『ヒコットランドの美女と野獣』の題で講演しました。ヒコットランドとは彦島の愛称であることを知らないで、首をかしげた人もいたようです。
   もう40年ばかりも前のことですが、彦島から選出された下関市議会議員が3人おられました。各人の政治的信条は別として、ゆうに1市を形成する人口をかかえる彦島の利益のために結束しようということにしたとリーダー格の錦織久芳さんがさかんに言っていたのを記憶しています。そのとき生まれた愛称がヒコットランドであり、いわばヒコットランド党の誕生でした。
   わたくしが言う「美女と野獣」とは、大女優木暮実千代と名優松田優作ですが、この2人の出生地が彦島であることは、偶然のできごとなのか、何かの因果関係があるのか。『ヒコットランドの美女と野獣』の主題はそれだったのであります。
   ユング心理学の説くところによれば、個人の自我は内的な心の(深層の)エネルギーと同時に周囲の環境である「外的世界」に向かうエネルギーによる2種類の動機とその行為を生む。前者を個人的無意識、後者を集合的(集団的)無意識とします。
   集合的無意識は、時空を超えて人間の行為の類似性となって現れます。木暮と松田の出現はユングのいう「共時性」であり、この現象を「布置(ふち)Constellation」と呼びます。
   彦島における「周囲の環境」とは、平家残党が土着した島であり、たとえば「彦島の12苗祖」など、ある種の「地霊」に覆われた地域の個性があります。雅(みやび)な気風を伝える平家ゆかりの彦島における集合的無意識が、すぐれた芸能人を生む布置となります。
   それは平家滅亡の関門海峡に抱かれる下関市域にもあてはまるわけで、田中絹代・藤原義江ほかの有名芸能人を輩出した土地柄が偶然の結果といえない説明を、ユング心理学に求めるのがわたくしの試論(私論)なのであります。
                                                                           (古川 薫)

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