トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記168 『炎の塔』読者討論会

つぶや記 168
 『炎の塔』読者討論会

   ことし5月に、拙著『炎の塔』が韓国語訳されました。その作品に関する読者討論会が、釜山文化財団主催でひらかれましたので、11月末、釜山に行ってきました。
   『炎の塔』は文武に秀で、国際感覚にも長け朝鮮王朝との国交を開いた守護大名・大内義弘の生涯をえがいた歴史小説です。
   義弘は有力守護弾圧政策を進めた足利義満の標的にされ、機先を制して2万の兵を率いて泉州に出撃、幕府の大軍と戦って壮絶な戦死をとげました。決戦の前夜、盛大な歌会を催すなど、文人武将らしい逸話ものこしています。国宝・瑠璃光寺五重塔(山口市)は、後事を託されていた弟たちが建立した義弘の供養塔です。
   義弘が出陣直前、朝鮮の王様あてに、土地を少しいただけないかと申し入れた国書が遺っています。これは幕府から追い込まれたとき、一族で亡命する準備だったのではないか。そんな史実もふくんだ『炎の塔』韓国語版の売れ行きはまずまずのようです。
   討論会には約80人の男女読者が参加、翻訳を担当された釜山国立大学校の趙正民教授が通訳、司会者のほかに釜慶大学校の尹一教授が読者代表としてステージに上がり、2時間にわたって皆さんとの活発な意見が交わされました。
   両先生とも九州大学に留学しておられ、日本史にも詳しく、かなり痛いところを衝かれたりもしました。
   「義弘が京都で百済の子孫であることを明かした理由が曖昧であるような気がします」「百済に対する確実な歴史意識よりも、戦争に負けたときの亡命地程度の認識だったのではないか」などの意見も出ましたが、全体として好意的な理解をしめされ、著者としては気持ちよく、また勉強もさせられた討論会となりました。
   日韓関係は外交問題でぎくしゃくしていますが、民間の文化交流は国境を取っ払った自由な雰囲気での楽しいひとときでした。
                                                                             (古川 薫)

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