トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記147 熊本城の武者

つぶや記 147
  熊本城の武者

   熊本城に行って来ました。五年前、宮本武蔵の取材に訪れたときは、工事中だったので城内には入らなかったのですが、このたびは立派に出来上がった本丸御殿を見せてもらいました。
   ずいぶん豪華にお金をかけての新築で、このお城を観光資源にしようという熊本県の心意気というか、したたかな打算がうかがわれました。入場料500円です。ことしの正月など1日に2万人近い人であふれたそうですから、1千万円の収入かと、そんな下世話なことを考えたりもしたのは、わたくしが住んでいる下関市では、こんど海峡沿岸に大観覧車を設置すると聞いていましたので、観光の商売もいろいろだなあとため息まじりに思ったことであります。
   さて熊本城の本丸に行くには石段を踏まずに登る道もあるのですが、せっかくだから昔ながらの石段を登ることにしました。加藤清正が築いた豪放壮大な石組みを左右に見て、息も絶えだえの奮闘しばし、引き返すこともできず、ひたすら石にしがみつく予想外の難行でしたが、華美を尽くした新築の本丸御殿よりも歴史を体感した喜びがありました。
   この熊本城にはボランティアの男女がたくさんいて、それぞれに扮装をこらして、観光客を楽しませているのです。
   あの険しい石段を登るとき、槍をかつぐ武者の軍装をした若者に何度か助けられました。「ありがとう。助かりました」と、感謝のことばを述べると、その武者氏は、にこりともせずに答えて曰く。
「いや、なんのなんの、礼には及ばぬ」
  彼はまったく武者になりきっているのでした。
「心からお礼を申す。旅のよき思いでになりましたぞ」
「つつがなき旅をつづけられよ」
ボランティアもこのくらいになると本物ですね。熊本城で肥後もっこす若者から歴史を体感させてもらいました。
                                                                             (古川 薫)

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