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つぶや記 146
砂漠の戦死

 アルジェリア人質事件は、天下国家をあまり論じないことにしているこの欄で、取り上げる問題ではないと思っていたのですが、わたくしの知人が被害者と関係していると聞いて、黙っていられなくなりました。
 ある新聞のコラムで、クラウゼヴィッツの『戦争論』から、予想できない霧が戦場の3分の2を覆っているという文言を引いていました。状況の判断がむつかしいということであり、アルジェリア政府を弁護しているようにも受け取れる発言だと愚考しました。
 ここで『戦争論』を持ち出すのなら、第2章「戦略的攻撃の性質」から、教訓を取り出すべきでしょう。人質をとって立て籠もっているテロリストを攻撃するときは、慎重の上にも慎重な戦略をめぐらすべきは、素人でも分かることです。クラウゼヴィッツはその章で次のように言っています。
 「第一に、攻撃というものは、一気呵成に完成されるものではなく、休止期間が必要である」
 アルジェリア軍のこんどの攻撃は、救出作戦ではなく、戦略的攻撃でもない短期間での衝動的で杜撰な突撃でした。あるいはプラント設備の保全を優先した、つまり人命を二の次とした無慈悲な経済的打算を基底とする作戦行動だったとしかいえません。
 日本はもっと激しくアルジェリア政府に抗議すべきですが、何となく迫力に欠けているのは、エネルギー資源の貧しい国の外交的配慮かと思うと、悔し涙がこぼれます。欧米がアルジェリアの措置に同意を示しているらしく、それによっても我が国の舌鋒が軟化するのであれば、犠牲者は浮かばれません。
 産業戦士とは、戦時中の命名ですが、これは「砂漠の戦死」です。地球の裏側の、しかも風雲急を告げる無防備の砂漠地帯に家族と別れてはるばる赴任し、テロリストに虐殺されるとは!21世紀の現在、そんな極限の不幸が、わたくしたちの周辺に存在することを、胸に叩き込んでおかなければなりません。
                                      (古川 薫)

 

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