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つぶや記 137
ノーベル賞と医学と経済学

 ことしは下関市在住の田中慎弥氏の芥川賞受賞で賑わいましたが、それと同じくらいの関心度で、受賞のニュースに耳をかたむけたのはノーベル賞でした。この世界的規模の賞に、日本人が注視しはじめたのは、むろん受賞有力候補者に、日本人の名が挙がるようになったからです。
 しかしノーベル賞の下馬評が的中することは、めったにありません。文学賞でしばしば取りざたされながら、ついに逸したのは三島由紀夫、井上靖のお二人でした。井上氏の場合、芥川・直木賞の選考会当日のように、自宅付近に報道陣がたむろすることもありました。やはりサプライズですね。
 こんどの村上春樹氏は最有力を予想されながら、二番手の中国人作家・莫言氏に決まり、「ハルキスト」たちを失望させました。ノーベル文学賞の選考員には、どうもへそまがりが多いようで、1千万部などという超ベストセラーズ作家は敬遠されるのではないかと見るむきもあるらしい、というのは日本人の負け惜しみですか。平和賞とからめて考えると、政治的抑圧にたいする抵抗といったシチュエーションの作品が有利な傾向も感じられます。
 ところで京都大の山中伸弥教授の医学生理学賞の受賞は、衝撃的でした。むつかしいことはわかりませんがiPS細胞の作成に成功、再生医療や難病治療に画期的な道を開くというのは、日本人だけでなく人類にとっての朗報です。「医学」とはまさに人間のための「学」なのだなあと、あらためて痛感、そして「経済学」とは何だろうと、反射的に思いをめぐらしました。
 慢性化した世界の不況が、医学生理学のように、解決への処方箋獲得にむかう経済「実学」というものはないのか。広辞苑によると「経済学」とは「経済現象を研究する学問」とありました。某大学経済学部の教授に、わたくしは質問してみました。
「経済学者が閣僚に加わった政府も、不況退治に失敗したようですが、経済学とはそんなに実践の学ではないのですか」と。
 すると学者先生は「医学には昔から魔術的要素がありますからなあ、とにかく私は経済史専攻ですから処方箋は出せません」と逃げられてしまいました。
                                     (古川 薫)

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