トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記128 涙の効用

つぶや記 128
  涙の効用

   このところ左目に軽い出血があり、長府の京野眼科に通っています。酒類は焼酎の湯割り1杯とドクター・ストップされて、不自由しています。
   不自由なのは仕事のことでして、両眼の視力アンバランスの状態で活字をにらむ隻眼の毎日に少々くたびれています。「しばらく我慢してください」と京野博士から励まされながら、目下山口新聞連載中の品川弥次郎は、どうやら完結まであと1ヶ月となりました。毎日新聞の昭和映画クロニクルは、高校野球その他で夏休み。少しばかりスロー・ライフしています。
   医院での待ち時間は、隻眼ながら格好の読書の時間です。新潮文庫になった末木文美士『日本仏教の可能性』など読んでいますが、ときには待合室にあるパンフレットに目を通したりします。『涙の話』はたいへん面白くためになる冊子でした。わたくしたちは1分間に20~30回まばたきしていること、まばたきという涙のポンプで、目の表面に一定量の潤いを送っていることなど勉強しました。
   老来、感受性の鈍化か、めったに泣くことがありませんが、この前、NHKの朝ドラ『梅ちゃん先生』で、涙を流しました。横になっているので感傷の涙が洗眼してくれるのです。そのとき患っている左目の涙が少ないことに気がつきましたし、涙がひどく目に染みるのも実感しました。
   悲劇を観て泣くとカタルシスによって心が洗われるとアリストテレスは説いたそうですが、朝ドラに泣くのは1日のはじめにふさわしい寝覚めで、涙は洗眼に好適とは、隻眼ライフで会得した涙の効用です。
                                                                            (古川 薫)

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