つぶや記 16
「みすヾが生きていたら」
朝焼小焼だ 大漁だ 大羽鰯の 大漁だ。
浜は祭りの やうだけど 海のなかでは
何万の鰯のとむらひするだらう。ーーー
金子みすヾの『大漁』です。正直に言って、わたくしはこの詩をしんから
好きになれませんでした。大漁でにぎわう港の風景を歌う童謡としては、
暗い影がひそんでいるように感じられるからです。これに曲をつけるとし
て、子どもたちと一緒に、明るく歌えるのだろうか、な どと考えふと戸惑
いを覚えるのです。これを詠むみすヾの視線は、おとなたちの、つまり自
分もふくめて、他の動物を殺してわが命を維持する人間たちのエゴイズ
ムにたいする疑念、ないしは激しい怒りと悲しみがこもっているように思
えるのです。
このごろ毎日のように新聞紙上に躍る「口蹄疫」の大活字を見ているう
ちに、金子みすヾの『大漁』を連想せずには、おれなくなりました。汚染の
傾向を察知するやいなや10頭、100頭の牛を「殺処分」し「埋却」すると
いうむごたらしいニュースが、テレビに新聞に、日常的テンポで流れてい
く 。
宮崎県庁にたずねてみました。6月13日現在、口蹄疫で殺処分された
牛さんは16万7840頭だそうです。
土のなかでは 何万の牛のとむらひ するだらう。
金子みすヾが生きていたら、号泣するかもしれません。7月、田中絹代
ぶんか館では、木原豊美さんの講演はじめ金子みすヾの企画展を準備
中です。時宜を得たというには、かなしいタイミングですね。
(古川 薫)









